「もうちょっと待っていればもっと利益が出たのに…」
「せっかく利が乗ってたのに、すぐ反転して損切り…」

こんな経験、トレードをやっていれば一度はあるのではないでしょうか。

この“もったいない”を防ぐために使えるのが、
トレーリングストップ(Trailing Stop)です。

本記事では:

  • トレーリングストップの基本的な仕組み

  • 裁量・自動売買(EA)それぞれでの使い方

  • EA開発での応用ポイント

を解説していきます。

トレーリングストップとは?

トレーリングストップとは、含み益が伸びたときに、
損切りライン(ストップロス)を自動的に“追従させる”仕組みです。

ポイントは以下の通り:

  • 含み益が出ている間だけ、SLを価格に近づける

  • 含み益が減っても、SLは元に戻らない

  • 反転してSLに当たれば、利益確定 or 利益を守った損切りになる

簡単な例を出してみます。

【例】トレーリングストップの動き方(BUYの場合)

  1. エントリー:1.1000で買いポジションを持つ

  2. トレール幅:30pips に設定

  3. 価格が1.1035まで上昇 → SLが1.1005に繰り上がる(1.1035 – 30pips)

  4. 価格が反転して下落 → 1.1005で利益確定(+5pips)

つまり、「伸びれば利益を最大化、下がれば確定」という、
守りながら攻めることができる仕組みです。

裁量トレードでの使い方

MT4/MT5などの取引ツールでは、ポジションごとに
トレーリングストップを設定できます。

✅ 設定方法(MT4の例):

  1. ターミナル → 保有ポジションを右クリック

  2. 「トレーリングストップ」 → 「20ポイント(2pips)」などを選択

  3. 価格が一定幅以上進むと、SLが追従する

ただし注意点があります:

  • トレーリングはローカル処理(PC起動中のみ有効)

  • MT4を閉じたり、VPSが落ちると機能しなくなる

  • トレール幅が狭すぎると、ノイズで早期決済されやすい

そのため、トレードスタイルに合ったトレール幅を見つけることが重要です。

EA(自動売買)におけるトレーリングストップの使い方

EAの中では、トレーリングストップはかなり頻繁に使われる機能の一つです。

たとえば、以下のような条件を組み込むことで、柔軟なリスク管理が可能になります。

✅ トレーリング開始条件

  • 含み益が +10pips を超えたらトレール開始

  • 利益が ATR(14) × 1.0 に到達したらトレール開始

✅ トレーリング幅の決め方

  • 固定値で管理:例)15pips

  • ATRなどのボラティリティ指標で調整:例)trail_width = ATR(14) × 1.5

✅ 実装イメージ(疑似コード)

if (ProfitPips >= 10) { double newSL = Bid - trailWidth; if (newSL > oldSL) { OrderModify(ticket, openPrice, newSL, tp, 0, clrGreen); } }

このように、条件付きでSLを追従させることで、「利を伸ばすけど、利確は自動で」という理想的な管理が可能になります。

トレーリングストップのメリットと注意点

✅ メリット

  • 相場の勢いに乗って利益を最大化できる

  • 反転時に利益を守れる(±ゼロ or 少額利確)

  • 手動決済の判断ミスを防げる

⚠️ 注意点

  • ボラが高いと、早期にストップにかかるリスクあり

  • トレール幅が狭すぎると「微益連発」になりやすい

  • EAと裁量で使い方を分けるべき

EA開発での活用アイデア

EAのロジック内では、トレーリングストップは以下のような場面で活かせます:

① ブレイクアウト戦略の後押しに

価格が勢いよく伸びた後の利益確定を自動で調整。
固定TPよりも相場に合った柔軟な利確が可能になります。

② マーチン系・ナンピン系の“安全装置”に

含み益が出たら、なるべく早く建値以上にSLを置くことで、
「ナンピンしたけど損切りで全ロス…」を防げます。

③ フィルタと併用した“スマートトレール”

たとえば、

  • トレンドが続いているときは広めのトレール

  • レンジ入りしそうなら早めに締める

といった、相場状況に応じたトレーリング制御も可能です。

まとめ:トレーリングストップは「利益の盾」である

トレーリングストップは、単なる便利機能ではありません。
それは、「利益を守りながら伸ばす」ための防御と攻撃のハイブリッド戦略です。

EAにおいては特に:

  • 設定がシンプル

  • ロジックの幅を広げられる

  • パフォーマンスの安定化にも寄与

という点で、非常に使い勝手の良いツールです。

「勝てるEAを作りたいけど、リスクも最小限にしたい」

そんな方こそ、トレーリングストップをうまく取り入れることが、安定した運用の鍵になるでしょう。